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消滅時効の援用手続の解説

2016/03/19

消滅時効の期間を経過している長期延滞債権を譲り受けた債権者からの請求や訴訟提起

 近年、消滅時効の期間を経過している長期延滞となっている貸金債権について、他の貸金業者から貸金債権を譲り受けた貸金業者が、特定の簡易裁判所から、日本全国の借主に対し、一括して貸金請求訴訟を提起する問題が発生しています。

 長期延滞となっている債権については、消滅時効を援用できるケースも多く、明らかに消滅時効を援用できる貸金債権について、訴訟を提起するようなことは道義上問題ではないかという主張もされているところですが、個別に対応してくしかないというのが現状です。

消滅時効の期間の経過と時効の援用

 一定の期間弁済(返済)をしないにも関わらず、債権者が請求(裁判上の請求を差します。)をしない場合、債務者からも債権者から請求されない事実状態に対し、一定の権利がというものが発生します。

例えば、

 学生時代に友人から借りたお金を社会人になって定年退職した65歳になって請求されても、普通の人は「借りたのは確かだけど、今さら何だよ。」と思います。

 

 これを債権の消滅時効といい、消滅時効の期間の経過と債務者からの消滅時効の援用により、消滅時効により消滅します。

消滅時効の期間

 消滅時効の期間については、消費者事件の場合、貸金業者は大抵の場合、株式会社ですので、商法上の短期消滅時効の期間の5年が適用されるのが一般です。

消滅時効の援用

 また、債権の消滅時効が経過しても、当然に債権は消滅せず、時効の利益を受けるかどうかについては、債務者の意思表示によるとされています。

 債務者が時効の利益を受ける旨の意思表示によって確定的に債権が消滅するとされています。

例えば、

 確かに、時効だからお金を返さなくてもいいのは分かっているけど、借りたのは事実だから必ず返しますという人もいますよね。

 

 消滅時効の援用は、消滅時効を援用する旨の意思表示によって行います。具体的に言うと「時効だから払いません。」という意思表示です。

 消滅時効の援用の意思表示は、口頭でもよいのですが、後で言った言わないという話になります。貸金業者が債権者の場合、口頭で受け付けることはありませんので、内容証明郵便により書面で消滅時効の援用を通知するのが通常です。

債務の一部弁済と債務の承認

問題点

 消滅時効の期間が経過しても、債務者が時効の援用をしない限り、債権は消滅しません。

 したがって、消滅時効の期間が経過しても貸金業者から督促が来るのは違法ではありませんし、冒頭に述べた貸金請求訴訟を提起しても道義的な問題はあるとしても(ここが後で問題となります。)違法ではありません。

 消滅時効の援用をせず、債務(借金)の返済約束をしたり、返済してしまった場合、一般的には時効の利益を放棄したと評価され、時効を援用することができなくなります。

例えば、

 時効だけど払うと約束したり、実際に払っていて、突然、時効だから払いませんと言われても、債権者は困りますよね。

 

 貸金業者から突然請求を受けた場合、人によってはびっくりして払ってしまい、その後、消滅時効を援用しても(裁判になっている場合が多いです。)貸金業者から、一部の借金を返済したから時効の利益を放棄したと反論されるケースが多々あります。

事例による救済

 法律を知らなかったという法律の不知の主張は裁判所は認めません。

 なぜなら調べるなり司法書士などの専門家に相談に行けば知ることができたのにそれをしなかったのは本人の問題だからです。

 しかしながら、下級審の裁判例では、個別事情から「返済があったとしても返済をする本当の意思があったものではないから、時効の援用の放棄にあたらない。」などの理由により、救済している事例がありますのであきらめず主張することが大事です。

例えば、

 脅されて払ったなどの事情があるときや、延滞した額が100万円以上で、各月払った金額が1000円で、延滞利息の額にも満たない場合、普通完済する見込みもないのに返済する人はいませんから、他の事情とあいまって、返済する本当の意思があって支払ったものではないと評価されたりします。

 

債権者からの請求に対する当司法書士事務所の対応

消滅時効の援用通知

 当事務所では、依頼者からの依頼を受け、代理人として内容証明郵便で消滅時効の援用を通知します。

 内容証明郵便での消滅時効の援用通知は、本人が出しても構わないのですが、こういった貸金業者を相手にした事例の場合、出した書面の内容※や相手方によっては、内容証明郵便で通知しても無視する業者もいますので、司法書士の専門家を通して通知した方が安心です。

※ 内容が時効を援用する趣旨になっていなかったりします。

 また、貸金業者から「消滅時効の期間は経過していない。」「判決を取っているから消滅時効は中断(又は時効の援用を放棄)している。」などの反論がある場合、そういった事案についても対応します。

債権者からの訴訟提起に対する対応

 当事務所では、東京簡易裁判所や札幌簡易裁判所など遠隔地から提起された訴訟についても対応しています。

 簡易裁判所からの訴訟提起の場合、ある程度出頭をしなくても訴訟対応は可能ですので、遠隔地から訴訟提起された場合でも遠慮せずご相談ください。

 また、先に述べたとおり、事情によっては一部返済(弁済)をしてしまったケースでも、依頼者にとっていい方向で解決できる場合もありますので、そういった場合でもあきらめずご相談いただければと思います。

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この記事の執筆者

 司法書士・行政書士・FP 沖 邦彦

 千葉市中央区、千葉県庁、千葉地方裁判所そばの司法書士・行政書士・FP事務所です。

 法令・判例、先例・通達を重視した執務を行っています。暮らしや会社に関わる法律のこと、不動産や会社の登記のこと、営業許可や在留資格のこと何でもご相談ください。

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